A10 FusionのCPUとGPUの性能を歴代Aプロセッサと比較!
A10 Fusionは大きく進化したプロセッサ
ChipworksがiPhone 7を分解してロジックボードの解析を行いました。CPUプロセッサの「A10 Fusion」チップを詳しく解析するとTSMCが16nm FinFETプロセスで製造したものであることが明らかになりました。
A10 Fusionチップのダイサイズは約125平方ミリとなっており、新たにFOWLP技術と呼ばれるパッケージング技術を採用することで、チップ内に基板を使う必要がなくなり直接配線をすることからチップの薄型化が実現し、A9チップと比較しても非常に薄いプロセッサになっているとのことです。
iPhone7に採用されているA10 Fusionチップの内部にサムスン製の2GBの容量を持ったLPDDR4のRAMが搭載されており、この部分に関してはiPhone6sのA9チップの構造とよく似ているようです。
なお、iPhone7 Plusは3GBのRAMが採用されていますが、タイプの違うA10 Fusionチップが搭載されているようです。
- iPhone 7:A10 Fusion APL1W24 SoC + Samsung 2 GB LPDDR4 RAM (K3RG1G10CM-YGCHK3RG1G10CM-YGCH)
- iPhone 7 Plus:A10 Fusion APL1W24 SoC + Samsung 3 GB LPDDR4 RAM (K3RG4G40MM-YGCH)
ChipworksはX線画像も公開しており6コアのGPUが搭載されていることが明らかになっています。
A10 FusionチップのGPUはImagination TechnologiesのPowerVR GT7600 Plusです。これは、iPhone 6sに採用されたPowerVR GT7600に改良を加えたGPUとなっており、基本的なアーキテクチャは前モデルのiPhone 6sと同じということになります。
A10 Fusionの性能比較
では、iPhone 7に採用されているA10 Fusinチップはどれくらい性能が向上しているのかを実際にベンチマークアプリのGeekbench 4を使って各デバイスの歴代Aプロセッサと比較をしてみました。なお、iPhone4sがiOS10の対象外になったということでA5プロセッサは対象から外させていただきました。
シングルコア | マルチコア | |
iPhone7(A10 Fusion) | 3467 | 5610 |
iPad Pro 9.7(A9X) | 2921 | 4689 |
iPhone 6s(A9) | 2480 | 4106 |
iPhone 6(A8) | 1531 | 2617 |
iPhone 5s(A7) | 1264 | 2072 |
iPhone 5(A6) | 743 | 1144 |
A10プロセッサを搭載しているiPhone 7はA6プロセッサのiPhone 5から5倍、A8プロセッサのiPhone 6から2倍も性能が向上していることが確認できます。さらに、iPad Proに採用されているA9Xプロセッサよりも高い性能になっているのはすごい進化といえます。
追記:2018年3月28日にリリースされたiPad(第6世代)にiPhone 7/7 Plusと同じA10 Fusionチップが採用されました。A10 FusionチップはA9Xチップを搭載しているiPad Pro(2016 9.7inch)よりも高い性能を持っているので、iPad(第6世代)は旧型のiPad Proよりも高い性能を持ったタブレットということになります。
MacBookよりも高い性能を持ったA10 Fusion
ちなみに、A10 Fusionチップは12インチのMacBook(2016)のIntel Core m3-6Y30のスコアよりも高い性能となっています。
シングルコア | シングルコア | |
iPhone7 A10 Fusion |
3467 | 5610 |
MacBook Core m3-6Y30 |
2541 | 5011 |
A9XからすでにCore Mの性能を超えていたことを考えると当然の結果と言えるかもしれません。A10 Fusionを搭載したMacBookを見てみたいな!
GPUの性能
GPUの性能についても3D MARK(OpenGL ES2.0)を使用して測定してみました。
スコア | |
iPhone 7 A10 Fusion |
37292 |
iPad Pro 9.7 A9X |
32726 |
iPhone 6s A9 |
28602 |
iPhone 6 A8 |
17760 |
iPhone 5s A7 |
15366 |
iPhone 5 A6 |
2993 |
GPUの性能もiPad ProのA9Xを大きく上回るスコアとなっており、iPhone6のA8と比較して2倍以上の性能になっていることがわかります。A10 FusionチップのGPUコアはA9チップの改良版でありながらも大幅に性能を向上していることが分かります。
GPUの性能に関しては64bit化したA7チップの性能アップが凄いですね。
まとめ
ここまできたらMacBookのCPUはIntelではなくAプロセッサを採用してもいいのではないかとも思ってしまいますが、ARMアーキテクチャへの最適化やスペックの要求の高いMacBook ProやiMac、Mac Proのことを考えると、まだまだAプロセッサへの移行は厳しい状況でしょう。
性能の低いMacBookだけAプロセッサに対応することも考えられますが、二つの異なるアーキテクチャを持ったCPUを同時にサポートするのは難しいかもしれないですね。
とはいえ、ARMモバイルプロセッサの性能の進化は止まることがないので、今後も同じペースで進化を続けることになれば近い将来はIntelのCPUと同等レベルの性能を持ってしまうのは時間の問題ともいえそうです。
10.5インチiPad Proに搭載されているA10X Fusionチップについてはこちらの記事で詳しく書いているので参考にしてください。